2010年  2009年  2008年  2007年  2006年  2005年  2004年  2003年  HOME 
 2004年 24号  23号  22号  21号  20号 

宮城資料ネット・ニュース 24号 (04.11.01)
--------------------------------------------------
11月13日(土) 涌谷町で歴史資料の所在調査を実施
参加者を募集します

--------------------------------------------------

 去る10月24日の新潟県中越地震は、昨年7月の宮城県北部連続地震の悪夢をよみがえらせました。新潟地震による歴史資料関係のニュースはまだ十分に入ってきておりませんので、神戸大学に事務局がある「歴史資料ネットワーク」のHPに随時アクセスして頂き、情報の確認をして頂ければ幸いです。

歴史資料ネットワークのHP http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/

台風・水害、地震等々、今年の日本は、さながら災害列島と化しておりますが、宮城県も近未来に確実に巨大地震が再来すると予測されていますので、歴史資料保全の体制をいかに構築しておくか、重大な課題となっております。特に被災後のレスキューや被災状況の確認調査をスムースに展開するためには、どこにどのような資料があるのかを事前に把握しておくことが必要です。

そこで宮城資料ネットでは、東北歴史博物館と協力して、歴史資料の所在調査を県内で継続的に実施することになりました。その第1回目として、来る11月13日(土)に、涌谷町教育委員会の協力を得て同町での所在調査を一斉に実施いたします。 

ついては、この調査に参加される方々を募集いたします。調査は、昨年の宮城地震のあとに被災地5町で実施した悉皆調査方式と同様です。事前にリストアップした資料所蔵者のお宅をお訪ねし、資料の現状、点数、内容等を確認したり写真撮影をすると同時に、所蔵者の方から、家の来歴や地域の歴史などをヒアリングし、さまざまな歴史情報の収集をはかるものです。

この所在調査は、斉藤報恩会の助成金によって実施されますので、交通費と日当が支給されます。

この活動に参加が可能な方は、折り返しご返信ください。
--------------------------------------------------
   連絡先:平川新
    電話・FAX  022ー217ー7693(研究室)
    メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
--------------------------------------------------
*調査日時:11月13日(土) 午前9時10分 集合
*集合場所:涌谷町公民館(宮城県涌谷町字下道69-1 電話0229−43−3001)
  涌谷公民館URL地図
http://www.mapion.co.jp/here/all/041029/mapi3522312041029154706.html
*交通
:JRの場合
東北線で仙台発7時43分発 小牛田着8時27分(乗りかえ)
小牛田発(石巻行き)8時39分発 涌谷着8時47分
:自家用車の場合
東北自動車道の古川インターチェンジで降りて国道108号線で涌谷まで
--------------------------------------------------
*自家用車で参加が可能な方はお知らせください。
*調査では写真撮影を行いますのでデジタルカメラをお持ちの方はご持参ください。
*昼食はこちらで用意いたします。
--------------------------------------------------
*このメールを身近な方々にも回して頂けると幸いです。
*お近くにこのメールニュースの配信をご希望の方がおられましたら、アドレスをお知らせください。次号より直接に配信させて頂きます。
*今後、このメールニュースが不要な方は送信リストから除きますので、ご一報ください。
*これまでに発行した宮城資料ネットニュース(23号まで)は「歴史資料ネットワーク」(神戸大学)のHPにある「宮城歴史資料保全ネットワーク」のコーナーに掲載されています。ご欄下さい。
http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/miyagi_earthquake.htm

--------------------------------------------------
宮城歴史資料保全ネットワーク(略称:宮城資料ネット)
〒980-8576 仙台市青葉区川内 
東北大学東北アジア研究センター 平川新研究室気付
電話・FAX 022ー217ー7693
メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
--------------------------------------------------

宮城資料ネット・ニュース 23号 (04.10.13)

--------------------------------------------------
古川市でのレスキュー作業が無事に終了しました
--------------------------------------------------

古川市・橋平酒造店の緊急レスキューについて(お礼と報告)
                      2004.10.12  斎藤善之

 去る10月10日(日)・11日(月・祝日)の両日に実施されました古川市七日町の橋平酒造店の歴史資料緊急レスキューは、多数の参加者のご協力をえて、邸内に残されていたすべての資料について保全措置を講じることができました。ここに今回の現場責任者として、関係者の皆様に、心からの御礼を申し上げます。
 当日は心配された天候も回復にむかい、10日には31人、11日には23人(うち両日参加が17人、そのうち宿泊12人)にのぼる宮城史料ネット関係者のご参加を得て、膨大な資料の保全作業にとりくみ、2日目午後6時をもって作業を終えることができました。日も短く、最後はライトを点しての作業となりましたが、膨大な資料のレスキューをなんとか滑り込みで成功させることができました。
 今回レスキューされた資料は、本日から始まるはずの建物の一部取り壊しと全面改修によって、大部分が廃棄されたであろうことはほぼ間違いなく、それを危機一髪で回避できましたことはまことに喜びにたえません。
 また資料のレスキューと平行して、10日には千葉大学工学部の玉井哲雄研究室が緊急調査の呼びかけに応じて、院生ら8名が現地を訪れ建物調査がなされました。歴史資料レスキューとあわせて、破壊・改修される建物についても記録保存がなされましたことを付記しておきます。
 なお保全資料はすべて現状記録(撮影並びにスケッチ)をとった後、多くは段ボールに格納し、段ボールごとあるいは単体で管理番号を付し、吉野作造記念館の収蔵庫ならびに佐々木家所有の空き家3軒に移送しました。その概要につきましては、現場記録を再整理しまして、なるべく早く皆様に配布する所存です。
 これら保全資料については、今の保管場所は緊急措置ということで、私どもとしては、全面改修後の同家施設での一括保管が望ましい旨申し入れてありますが、この点につきましては、今後の同資料群の調査整理体制づくりとの関係で決まってくることになろうかと思います。なおその体制については、今後現地(市教委と梶uふるかわまちづくり会社・醸室」)が中心となって進めることとなり、要請があれば私も共に考えていくことになりますが、その点につきましても随時皆様に報告し、またご協力を仰ぐこともあろうかと思いますので、その際にはどうかよろしくお願いいたします。
 なお今回の調査に際しまして、橋平酒造店御当主・佐々木一郎様ほかご一家の皆様には、同家を私どもの宿泊場所としてご提供いただきましたほか、古川市教育委員会と商工観光課には資料の搬出作業に従事していただき、また梶u醸室(かむろ)」からもご協力を賜りましたことをあわせてご報告いたします。
 とりあえずお礼をかねて、まずはご報告いたします。ありがとうございました。

                                以上


--------------------------------------------------
<事務局より>
 来る11月13日(土)に宮城県涌谷町において、資料所在調査を実施する予定です。宮城歴史資料ネット、東北歴史博物館、涌谷町教育委員会による合同調査となります。
 詳細は追ってご連絡致しますので、この調査にも多くの方々のご参加を頂ければ幸いです。 
--------------------------------------------------
宮城歴史資料保全ネットワーク
〒980-8576 仙台市青葉区川内 
東北大学東北アジア研究センター 平川新研究室気付
電話・FAX 022ー217ー7693
メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
--------------------------------------------------


宮城資料ネット・ニュース 22号 (04.10.07)
--------------------------------------------------
10月10日と11日に古川市で資史料の緊急レスキュー
   救出ボランティアを募集します 

--------------------------------------------------

 みなさまに緊急のお願いがあります。江戸時代以来、商業の町としての歴史をもつ古川市で、「橋平酒造店」の古い蔵に収納されていた資史料が消滅する危機にあることが判明しました。具体的な事情については、地元の方の要請をうけて昨日現場を確認された斎藤善之さん(東北学院大学)からの要請文(下記に掲載)に記されていますが、来週15日からは建築業者が蔵内に入って整理・廃棄作業に取りかかるとのことですので、レスキューを実行するのは10日(日)と11日(月、祝日)しかないということになりました。

 つきましては、両日(もちろん、いずれか1日でも構いません)のレスキュー活動にご参加いただける方は、下記の斎藤善之さんまで、至急ご連絡ください。集合場所・時間、交通手段等については、追って斎藤さんから連絡がいくことになっております。作業は資史料類の搬出作業が主になると思われます。

斎藤善之さんのメールアドレス ysaito@tscc.tohoku-gakuin.ac.jp
 同 電話(研究室)022−721−3229

(以下は斎藤善之さんからの要請文です)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−- - - -
各位
斎藤善之
緊急レスキューへのご協力のお願い

1)対象
 古川市の中心部を貫流する御絶川に面し、歌枕の名所「御絶橋」のたもとで造り酒屋を営んでいた「橋平酒造店」に残されている古文書、家財類です。

2)経緯
 橋平酒造店は、このほど古川市まちづくりTMO(市役所・地元商店会などが出資した3セクのようなもの)の「にぎわいまちづくり」の核施設として再整備されることになり、来年6月のオープンにむけて急ピッチで「整備」されることになりました。この15日からは建築業者がはいって、建物(離れほか)のいくつかを取り壊し、残りは全面修復するとのことです。
 私はこのような計画の存在自体知りませんでしたが、このTMOメンバーから先週突然連絡があり、当該施設の活用方法について相談に乗って欲しいという話を受け、とりあえず学生のヒアリング調査の対象になるかくらいに考えて、現状をみてからと返事し、本日午前に急遽現地を訪れました。

3)現状
 ところが現地をみたところ、思いがけず切迫した事態になっていることがわかりました。 当家は現在、最近までお住まいになっていた当主ご家族が引っ越しをされ、後かたづけの最中でした。ちなみに当家は、丸森の斎理屋敷を思わせるようなかなり広い敷地に、店・居宅・隠居所・土蔵数棟・醸造蔵2棟などの建物が現存しており、それぞれ立ち入って実見したところ、いずれの建物にも書籍、古文書、ならびに醸造用の道具、家具、什器、衣類がなお相当に(というか、ほとんど手つかずに近い状態で)残されていました。ちょうど搬出作業にかかっている最中でしたが、めぼしいもののみ持ち出しているようでした。またご当主の呼びかけにより、市立図書館の職員ならびに吉野作造記念館の館長らが、先日同家を訪れ、それぞれ古書ならびに文書のうち関心のあるものを搬出したようです。しかしなお帳簿類が各所に散見されたほか、古い衣類や什器類もほとんどが手つかずで、その保存方についてご当主ならびに関係者にお訊ねしたところ「正直もてあましており、何とかしたいとは思っているが、おそらく15日以後、建築業者が入れば、そのほとんどが片づけられる(廃棄される)のではないか」ということでした。つまり膨大な同家の文書や備品は、めぼしいものを各関係者が持ち出しつつあるものの、残る大半は廃棄される現状ということです。しかも解体・整理業者の作業が15日に迫っており、時間も切迫しています。まさに先に緊急レスキューを経験した「八百長」同様の事態といってよいでしょう。

4)作業
 大まかな現状記録をとり、土蔵・居宅内の全ての備品・文書類を緊急に搬出することが求められています。この蔵出し作業に従事してくださる経験者(もちろん未経験者も歓迎)のご参加、ご協力をお願いします。
 作業日は10月10日(日)および11日(月・祝日)の両日を考えています。もちろん1日のみ、または半日だけでも、参加していただければ幸いです。
 なお段ボール類などの備品は、今回はTMO側に依頼し準備してもらうつもりです。

搬出した資史料は、同家が斎理屋敷と似た公開施設になるとのことで、同家内に保管されることが見込まれます。また当面の搬出先は、今日の時点ではまだ詰めていませんが、同家内か、近隣の空き蔵などが考えられそうです。
なお今回は膨大な仕事量から、TMO側にもできるだけボランティア参加者を募ってくださるようお願いしました。彼らと我々経験者がチームを組んで作業にあたることになるかと思います。

*参加してくださる方は、斎藤宛、または佐藤大介君宛にメールなりでご連絡ください。参加数や顔ぶれなどをみて、現地までの交通手段、集合時間などは、追って個別に連絡いたします。

なお本日撮影した画像ファイルを添付しました。ご覧ください。

--------------------------------------------------
車でのご参加が可能な方は、その旨、お書き添え頂ければ幸いです。
--------------------------------------------------


<宮城資料ネット事務局より>
--------------------------------------------------
 このメールニュースは、昨年7月の宮城県北部連続地震による被災文化財救出・調査等のための連絡用として地震直後から配信を開始しました。できるだけ活動情報を共有していただくために、広く関係者の方がたに配信しております。なお、配信が不要な方は、その旨、下記の事務局までお知らせください。また周辺の方々に転送して頂いても構いません。
--------------------------------------------------

宮城歴史資料保全ネットワーク
〒980-8576 仙台市青葉区川内 
東北大学東北アジア研究センター 平川新研究室気付
電話・FAX 022ー217ー7693
メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
--------------------------------------------------

宮城資料ネット・ニュース21号 (04.5.24)

--------------------------------------------------
ふすまの下張り文書の整理が終わりました。
--------------------------------------------------

 前号第20号が今年2月21日の発信でしたから、3ヶ月ぶりのニュースとなります。かなり間隔があきましたが、宮城資料ネットの活動が休止していたわけではありません。ふすまの下張り文書の整理作業という、なんとも根気のいる地道な作業が続けられておりました。今号では、その中心的な役割を果たしてくださった七海雅人さんと、市民ボランティアとしてご夫婦でこの作業に参加してくださった今野則夫さんに、レポートをお願いしました。

 整理を終えた長谷川家文書は4月26日に長谷川家にお返しにあがりました。またこの日は、同じく矢本町の斎藤家に、同家文書の史料目録と史料全点を撮影した電子データ(CD版)をお届けしました。斎藤家は昨年の地震で母屋が全壊してしまいましたが、今回、私たちがお訪ねしたときは新家屋が完成していました。解体した母屋にあった大きな神棚や、意匠をこらした欄間などを巧みに組み込んだインテリアとなっており、設計士がだいぶ苦労したようですと、笑いながら話しておられました。少しでも古いものを残しておきたかったというご当主のお気持ちが伝わってきましたが、地震という巨大な災害にもくじけずに、たくましくよみがえってくるエネルギーもまた感じさせられました。

--------------------------------------------------
矢本町「長谷川家文書」の整理を終えて    七海 雅人
--------------------------------------------------

*昨年の宮城県北部連続地震に際しておこなわれた資料保全活動により、桃生郡矢本町の長谷川家から搬出されたふすま下張り文書の整理が4月に終わりました。遅くなりましたが、整理作業の概況を報告します。

*ふすまは、昨年11月1日におこなわれた矢本町での資料保全活動において、長谷川家から発見されました。当家では、古いふすまの下張りに古文書が用いられていることから大切に保管されており、自然脱落していた一部の文書は額に納めていた由です。古文書の内容を知りたいというお望みのため、宮城資料ネットでお預かりし、解体整理をおこなうことになりました。

*作業は、ふすまを仙台市へ持ち帰り、11月から今年4月にかけて、東北大学東北アジア研究センターの一室でおこないました。不定期でしたが作業の延べ日数は47日、大学の冬休み・春休みを利用した集中的な作業となりました。私を班長に、東北大学の研究員・大学院生が随時参加するという形をとりましたが、特筆するべきは、宮城資料ネットによる桃生郡河南町斎藤家文書のレスキュー作業・東北大学への寄贈を新聞記事でお知りになった一般の市民である今野則夫・雅子ご夫婦の参加です。今回、整理作業にもっとも長時間たずさわってくれたのが今野氏であり、ご夫婦の熱心なボランティア活動がなければ、「長谷川家文書」の史料整理を終えることはできませんでした。

*作業は、つぎの手順でおこないました。
(1)解体前のふすまの写真撮影とナンバリング。
 搬出されたふすまは、すべて枠木ははずされており、全部で14枚ありました。これらにAからNまでグループ番号をふり、また搬出の途中で脱落した文書には「雑」、所蔵者のお宅で額に納めていた文書には「額」のグループ名をふりました。解体前について、デジタルカメラによる各グループの写真撮影はおこないましたが、所蔵者へ早急に返却しなければならない緊急の整理作業であること、私たち作業従事者に十分な技術が備わっていないことなどから、スケッチなどによる文書一点一点のふすまにおける配置位置の記録採りについては、今回断念することになりました。

(2)ふすまの解体
 ふすまの解体は、まず竹べらにより、糊がふけて剥がしやすいところから始め、それが行き詰まった段階で、霧吹きによる湿気入れで糊をうるかし、ピンセットなどを用い慎重に剥がしていくという順番をふみました。ふすまの下張りは、重層的に文書が貼り付けられてできあがっています(いわゆる蓑貼です)。そこで剥がす過程では、一層ごとに番号をふっていき、剥がし終わった文書は層ごとにまとめるように注意しました。この解体作業をおこなった方ならば、よくご理解いただけると思いますが、近世の和紙にくらべ、近代以降の薄手の機械製の紙は非常に扱いにくいものです。湿気を入れると、紙と紙との境目がわからなくなってしまうこともしばしばで、何度もくじけそうになりました。また蓑貼の中には、古いふすま絵がそのまま一枚丸ごと使われている事例もありました。こういった大きなものから、わずかの紙片や、紙と紙との間に挟まっていた釘にいたるまで、解体の過程で現れたすべての史料を回収・保存しました。

(3)ラベルの貼付・写真撮影・封筒詰め
 回収したすべての文書・絵・釘について、グループ名・層番号・史料番号の3点を記した和紙製のラベルを貼り付けました。また破損文書については、和紙の小片を裏側から貼り付けて破れ目を手直しするなど、ごくごく簡単な修復もおこないました。
こうして一通りできあがった史料群は、全点デジタルカメラで写真撮影し、層ごとに中性紙封筒に入れ、ふすまのグループごとにまとめて封筒の束をつくりました。さらにこの封筒の束を二つの中性紙製の紙箱に納め、それぞれの箱に防虫香を入れて整理作業は完了しました。

(4)数点の史料翻刻
 今回は緊急の作業ということで、文書すべてに関する目録の作成はおこないませんでした。そのかわり、所蔵者に対しては、数点の文書の翻刻をお渡しすることになりました。幕末の婚姻関係や肝煎の業務、明治期の村会議員としての活動、宿屋の営業など、長谷川家の歴史が浮かびあがるような一紙ものの文書を11点選びました。所蔵者へは、整理の終わった二箱、デジタルカメラの写真を収録したCDロム、翻刻した史料の原稿の3点をお渡しすることになります。

*14枚のふすま下張りを解体した結果、史料の点数はおよそ1100弱となりました。江戸末期から明治期にわたるもので、肝煎・村会議員・宿屋などの役職・営業にかかわる文書、私信、矢本村の村政文書、神社・寺院のお札類、帳簿断簡などから構成されています。これだけ多様な史料が出てくることは予想外であり、長谷川家という家に集積された文書を通して、江戸〜明治移行期の矢本村の様相がよくわかる内容だと思います。ただし、鉛筆書きなどの書き込みがあるものもあり、糊付けや表装の仕事が雑なことから(このため、解体作業も苦労させられました)、これらの文書が下張りに提供されたのは、昭和になってから(もしかしたら戦後)ではないかという感想ももちました(この点は、私自身が聞き取りにあたっていないので、あくまでも感想です)。

*今回の作業では、解体を終えた直後、京都造形芸術大学の尾立和則・宇田川滋正両氏が訪ねてくださり、ご指導を受けることができました。私たちが何度もトライして剥がせなかった明治の罫紙を、尾立さんが、わずか20分ほどで剥がしてくださった時の感動は、生涯忘れることがないと思います。紙を剥がす際の基礎的な方法、ラベルの張り方なども教えていただきました。何よりも、「失敗を重ねて技術は進歩していくものです」、というお言葉は、大きな励ましになりました。
 表装教室で紙表具に馴染んでいたとはいえ、私自身、これだけ大量の文書を剥がすという作業は初めての経験でした。そのため、自分のことで精一杯で、作業に参加してくれた方々に対して、技術上の十分なアドバイスができなかったことに悩み続けました。結果、学生諸君には「難しい」という印象が先行してしまったようで、湿気入れをともなう解体作業は、事実上、私と今野さんご夫婦だけになってしまったことが、今回の大きな反省点です。どのようにすれば楽しく参加できるのか、技術の一層の向上とともに課題であり、類似の作業を任された場合は、より手際のよい仕事ができるように、マネージメントの能力も含めて腕を磨いていきたいと願っています。

--------------------------------------------------
○襖の下張り剥がし作業 今野 則夫
--------------------------------------------------

 職を離れて年金生活、「毎日が閑なのはなんと素晴らしい。」と時間を謳歌していた。
 しかし、時が過ぎるにつれ「待てよ。まだまだ体が動く、なにか世間の足しになる事が出来るのでは。」と考え始めて来た。そんな折りに新聞で、河南町の斉藤家より大量の古文書が東北大学に寄贈され、大学はその整理に数年を掛けると言う記事を見た。大変な仕事の様だが、下働きが必要ではないかとピピッと感ずるものがあった。
 さっそく東北大学に赴き、飛び込みで平川教授に面談したら、教授は斉藤家はさておき差し当り現在、平成15年の県北地震により被害を受けた矢本町の長谷川家の損壊した襖について、下張りされている古文書を剥がす作業中だが人手が必要との話であった。
 作業に入り、驚いた。下張りは薄い紙が何枚も何枚も、引っ繰り返し・おっくし返し貼られていて、一枚一枚剥がすのは至難の業である。大変に根気のいる仕事で、どちらかというと気の短い私には、すぐに背中が梓くなる。それでも年の功でこつこつと約2ケ月掛かり、悪戦苦闘の未剥がし終えた。最初は手探り状態であった作業も、終盤近くには幾らかコツを掴んだような気がする.下張り古文書を解読する為の下準備の作業であり、解読整理作業全体からすればまだ緒に過ぎないが、でも剥がさなければ始まらない。流れの中の一端を担えた事に満足した。
 どんな作業でも成し遂げた時の満足感は、人に与えられた特権であり、生きがいともなる。一度だけの人生は終生挑戦であり、充実感によってのみ幸福と成り得ると思う。
 一日の作業を終え、近くの老人福祉施設で入浴し、もみもみチェアーで肩揉みして帰る爽快さよ!

--------------------------------------------------
宮城歴史資料保全ネットワーク
〒980-8576 仙台市青葉区川内 
東北大学東北アジア研究センター 平川新研究室気付
電話・FAX 022ー217ー7693
メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
--------------------------------------------------

宮城資料ネット・ニュース 20号 (04.2.12)
--------------------------------------------------
被災状況調査のデータベースが完成
 被災地5町や関係機関に寄贈

--------------------------------------------------

 しばらくご無沙汰しておりました。ほぼ2ヶ月ぶりのニュースの発行となります。
地震直後の8月から、激甚被害をうけた河南町、鹿島台町、鳴瀬町、矢本町、南郷町の5町に入り、たくさんのボランティアの方々のご協力を得て被災状況調査や資料レスキューを進めてきました。そうした活動が一段落したあとは、12月から調査カードの整理に入り、このほどようやくデータベース化が終了いたしました。

ちなみに各町の調査軒数をあげると下記のようになります。
河南町44軒、矢本町48軒、鳴瀬町61軒、鹿島台町36軒、南郷町34軒 

 5町合計223軒ですから、あらためてその数の多さに驚かされます。それだけ精力的に動き回ったということですが、今回のデータベース化の作業には、大学院生を中心とした数人の方々にお手伝いをお願いしました。あつく御礼を申し上げる次第です。

 データベースの内容は、各家のヒアリング記録をもとに、家屋等の被災状況、所蔵資料の内容、家や地域の歴史に関する情報などに分類整理し、写真も組み合わせることによって現状を確認しやすくしております。

 このデータベースは、プリント版とCD版を、上記5町の教育委員会のほか、宮城県文化財保護課、東北歴史博物館に寄贈し、今後の文化財保護行政に活用して頂くことにしています。単なる被災状況調査報告書としてだけではなく、5町の歴史資料所在目録としての役割もはたすことになると思います。

 このほかに現在も続けている活動には、被災地からお預かりしてきたフスマの下張りのはがし作業があります。なかなか根気のいる仕事ですが、こちらも学生さんや市民の方々のご協力を頂いて進めております。間もなく一段落しますので、これについてはそのときに作業の状況などをお知らせすることに致します。

*添付ファイルに「被災調査報告書」の写真を付けております。
--------------------------------------------------
宮城歴史資料保全ネットワーク
〒980-8576 仙台市青葉区川内 
東北大学東北アジア研究センター 平川新研究室気付
電話・FAX 022ー217ー7693
メール  hirakawa@cneas.tohoku.ac.jp
-------------------------------------------------